犬 おもちゃを考えてみる
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今まで株を買っていた人はこれまでの株価下落で全滅しているのだから、今まで買ってこなかった人々に株を買わせなければ下落は止まらない。
しかしそれには、彼らが適正だと思うところまで株価を戻さなければいけない。
今のアメリカはまだそのプロセスの真っ最中であって、これはおそらくもうしばらく続くだろう。
そういう意味では、政策をいくら打ってもアメリカにはダウンサイドリスクは残ってしまうのである。
だからこそ、グリーンスパン氏も、金利を下げるたびにまだリスクはさらに悪化する方向にあると言っているわけで、私もその通りだと思う。
ヨーロッパはアメリカにおんぶにだっこで株価も一緒に上がっていったので、今は一緒に下がっている。
そういう意味では、今のヨーロッパがアメリカより条件がいいとは言えない。
一方、日本を見ると、日本はすでに株価も地価も充分下がってしまった。
したがって、資産価格の調整はほとんど終わっている。
まだ景気が悪いので少し下がっている部分はあっても、景気がよくなればすぐに反転に持っていけるぐらいのところまで下がっている。
そういう視点で見ると、正しい政策さえ採られれば、一番ダウンサィドリスクが低いのは日本であると言える。
同様に政策をきちんと打って落ち込みは許さないということでやれば、世界中の株式市場で一番安全なのは日本なのである。
そういう意味では、正しい政策さえ採れば、お金がまた日本に戻ってくる可能性は充分にある。
もっと一言えば、世界的な同時不況のなかでブレーキをかけられるのも日本だけなのである。
というのは、ほかの国、例えばアメリカに投資するか、ヨーロッパに投資するかといっても、両方ともバブッていたからなかなか投資できない。
アメリカが下がって、日本が下がって、ヨーロッパが下がる。
ヨーロッパが下がるのを見て、アメリカがまた下がって、さらに日本が下がるというサイクルに陥るリスクはあるが、日本がしっかりした政策をとってここで踏ん張れば、ニューヨークは下がったが東京は上がった、東京はしっかりしているとなればョ−ロッパも安心するわけである。
そして、ヨーロッパが安定すればニューヨークも一息つける。
そういう形で、日本は一つの防波堤になるというか、ブレーキをかけることができる。
今ブレーキをかけることができるのは、もうすでに資産価格が充分下がった日本しかない。
ほかの国はまだ調整がしばらく必要なのだ。
そういう観点から見ても、日本は踏みとどまらなければ実際に、米国に対する同時テロ発生直後の市場の動きを見ると、日本の株価下落率が一番低く、円は度重なるNの円売り介入で抑えなければならないほど急騰した。
これは世界が米国経済のダウンサイドリスクの大きさに気づき始めたからで、その分、資金が日本に向かおうとしているのである。
ところが、実際のK内閣の経済政策は、恐ろしいほどアメリカ経済の早期回復を前提にしている。
T経財相の発言や文章を見ても、アメリカの回復にべったり依存していてなさけない限りである。
これが独立した主権国家なのかと疑いたくなるくらい自主性がなく、アメリカに甘えきっているのである。
特に、私と世界同時不況を議論した二○○一年一○月八日のサンデープロジェクトで、T氏が「日米経済は補完的な関係にあるので、米国が一四兆円の景気対策を打つのであれば、我々はその分景気対策をやらなくて済む」と発言したことは、米国民を怒らせるだろう。
これはとても同盟国の発言とは思えないからだ。
また九月一二日に発表になったK改革の工程表を見ても、「ケアハウスの設置主体を民間いけないし、また三つの大きな拠点のなかで踏みとどまれる唯一の国でもある。
今の日本の八割が直面しているバランスシート問題から来る経済危機に正面から対応しているものは一つもないのである。
これもみんなアメリカの回復さえあれば自分たちもなんとかなるという甘えの表れであろう。
それどころか、日本がバランスシート不況に陥っていることさえ理解していない海外の論調ばかり気にし、的外れの供給問題の解決ばかりに熱を上げ、事態のさらなる悪化を招いている。
また、ここに来て海外の論調も変わり始めている。
例えば、二○○○年末にブッシュの当選が決まった時点で、リンゼー大統領補佐官は、前政権との違いを鮮明にするためにも、日本は無駄な財政支出をやめ、財政再建に向かうべきだと主張していた。
ところが、私が二○○一年三月にリンゼー氏にホワイトハウスで会って、本書のMと2を見せ、このようなバランスシート不況でも財政をカットすべきですかと聞いたら、そういうことだったのかとすぐ理解を示してくれた。
そのちょうど一週間後に当時の森総理と麻生太郎経財相が同じくホワイトハウスを訪れたが、米国側から財政への注文は一切なかったという。
そして、それ以降から直近まで、米国側から日本は財政再建に向かうべきだという発言は一切出ていない。
また民間レベルでも、第4章で述べたように本書と同じ内容の私の論文が、米国でも大変権威の高い賞を受賞したことも、彼らが日本に対する見方を大きく変えてきた証と米国だけでなく英国でも大きな論調の変化が見られる。
例えば、これまで「構造改革の遅れ」ばかりを指摘してきた同国のF誌は九月一日の社説で、「構造改革も大切だが、総需要対策も必要だ」と、これまでとはまったく違うことを言い出している。
前述のピーター・タスカ氏やクルーグマン教授も指摘しているように、今の日本は需要不足が問題であり、それはサプライサイド経済では到底対応できるものではないことに海外の人たちも気づき始めているのである。
海外の論調は明らかに変わりつつある。
しかも、アメリカ自身がバランスシート不況に近い状況になってきたことで、日本のこれまでの政策に対する理解は深まることはあっても薄れることはないだろう。
また実際に、自分のカネを賭けて日本の株を買っていた内外の投資家の多くは、日本の実情を以前から良く理解していた。
だからこそ、当時のH政権が財政再建に動いた時、彼らは「日本売り」に走り、その後のO政権が大型の景気対策を打った時には大きく買い越しに転じたのである。
ところが少し状況が改善すると、すぐ財政の手を抜こうとする動きが政府内で現れ、K政権がその傾向をさらに強めたため株は急落し、政権発足以来わずか半年で株式市場だけで一○○兆円もの富が失われてしまった。
そもそも世界同時不況ということは、世界同時需要不足ということであって、決して世界同時構造問題ということではない。
すでに同時テロ後のアメリカがそうであるように、これから各国の政策はますます景気重視型になり、日本にもそのような政策が求められるだろう。
そういうことを考えて正しい政策をとれば、日本のマーケットはほかと比べて一番リスクが少ないということでお金も一戻ってくるだろうし、それによって世界経済をサポートする重要な役割を担うことができる。
今この役割を担えるのは日本だけだから、そういう意味でも日本に早く本当の構造改革とバブルの戦後処理とを分けてほしいと思う。
私はK内閣の不良債権問題と財政再建について非常に批判的な警告を発してきたが、それは決してK政権に反対しているからではない。
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